Next Edge創業ストーリー(代表 松葉)
教育×福祉で新しい価値を創造する株式会社Next Edge。2018年の創業以来、学童保育からスタートし、現在は障害児支援へと事業を展開しています。今回は代表取締役の松葉琉我さんに、創業のきっかけから見据える未来まで、お話を伺いました。
――まずは創業のきっかけを教えていただけますか?
「大学時代のアメリカ留学での経験がスタートでした」
「アメリカの大学生って、すごく目的意識が明確なんです。『この勉強がしたくてこの学部にいる』『将来はこの企業のこの職種で働きたいから、今こういう勉強をしている』。そういう学生が日常的にいる」
――日本の大学生との違いを感じたんですね?
「そうなんです。日本の場合は、将来やりたいことや目指す方向性について、じっくり考える機会が少ないように感じました。課外活動や人間関係づくりが中心になりがちで、もちろんそれも大切な経験なんですが」
「当時の日本には、どこか閉塞感というか。若者が未来に対してワクワクできない空気があったように思います。一方でアメリカは、様々な社会課題を抱えながらも、チャレンジできる可能性が広がっている印象がありました」
――その違いは何だと思われましたか?
「結局は、大学に入るまで、社会に出るまでの環境の違いなんじゃないかと。教育環境であったり、家庭環境であったり。そこで『教育から社会を変えていきたい』と考えるようになったんです」
――そこで最初に選んだのが学童保育だったと。
「はい。10歳くらいって、目に見えない概念を理解し始める大切な時期なんです。かつ、学童保育には決まったカリキュラムがない。だからこそ、子どもたちが自由に興味を持ち、様々なことにチャレンジできる。そこに可能性を感じました」
――でも、実際に運営していく中で課題も見えてきた?
「そうですね。発達障害やグレーゾーンと呼ばれる子どもたちの利用希望が増えてきたんです。受け入れたい気持ちはあるんですが、人員配置の制約もあって...。やむを得ずお断りするケースも出てきました」
「その時に障害児支援の領域を深く調べ始めたんです。すると、専門的な支援施設が実はコンビニ以上にあることを知って。でも、新しい施設を作ることが本当に必要なのかな、と」
――どういうことでしょうか?
「むしろ既存の学童保育や保育園、学校でインクルージョンを進めていく方が大切なんじゃないか。そう考えるようになったんです」
――なるほど。でも、なぜインクルージョンが必要なのか、という疑問もあったとか。
「そうなんです。人権の観点からその重要性は分かる。でも、専門施設での支援の方が効率的なのでは?という思いもあって。その答えがなかなか見つからなかった」
――転機となったのは?
「2040年の労働需給のデータを見た時です。なんと1100万人も労働力が不足すると予測されているんです。これは日本の労働人口の約20%。深刻な問題です」
「一方で、日本の労働人口の中には約650万人の障がいのある方がいて、そのうち400万人以上の方々が働く能力があるにもかかわらず、働く機会が得られていない。この2つの社会課題がつながった時、インクルージョンの新しい可能性が見えてきたんです」
――働く障がいのある方の現状について、もう少し詳しく教えていただけますか?
「興味深いデータがあるんです。現在、一般企業で働いている障がいのある方の70-80%が身体障害の方なんです。なぜかというと、実は私たち周囲の『理解のしやすさ』が大きく影響しています」
「例えば、左手に障がいのある方に重い荷物を持たせないとか、足に障がいのある方に長距離の移動を頼まないとか。そういった配慮は、イメージしやすい。でも、知的障害や精神障害のある方への配慮となると、なかなかイメージが湧きにくい。そこで大切になってくるのが、幼少期からのインクルーシブな環境なんです」
――なるほど。幼少期の経験が、将来の就労にもつながっていく?
「はい。でも、大切なのは障がいのある子どもたちへの支援だけじゃないんです。実は、むしろ周りの子どもたちの理解を育むことの方が重要かもしれません」
「幼い頃から、『○○くんはこういう特性があるんだ』『△△ちゃんはこういう時は手伝ってあげるといいんだ』ということを自然に学んでいく。そういう経験を持った子どもたちが大人になれば、職場でも自然と適切な配慮ができるようになるはずです」
――インクルージョンが実現すると、社会にはどんなメリットがありますか?
「まず、先ほどお話しした労働力不足の解消につながります。でも、それ以上に大きいのは、新しい価値の創出です」
「障がいのある方々が働きやすい環境というのは、実は誰にとっても働きやすい環境なんです。例えば、作業手順を視覚的に示すとか、情報を整理して伝えるとか。そういった工夫は、生産性の向上にもつながります」
「さらに、経済的な面でも大きな意味があります。働く場所を得ることで、社会保障制度を支える側としても活躍できる。そして何より、働くことで得られる自信や誇り、社会とのつながり。これは金額には換算できない価値だと思います」
――現在はどんな事業を?
「学童保育が2施設、重症心身障害児向けの児童発達支援・放課後等デイサービスが1施設。そして、特に力を入れているのが保育所等訪問支援です」
――訪問支援について、もう少し具体的に教えていただけますか?
「保育所等訪問支援というのは、私たちの専門スタッフが保育園や幼稚園、学校などを訪問して、その場で支援を行うサービスなんです。例えば、発達障害のあるお子さんが在籍している保育園に定期的に訪問して、その子に合った支援方法を考えたり、先生方と一緒に環境づくりを行ったりします」
――具体的にはどんな支援を?
「大きく分けて3つあります。1つ目は子どもたちへの直接的な支援。その子の特性に合わせた関わり方を実践的に示していきます。2つ目は先生方への助言や提案。『この子の行動には、こんな意味があるかもしれません』『この場面では、こんな対応が効果的かもしれません』といった具合です。3つ目が環境調整。視覚的な手がかりを増やしたり、刺激を整理したり。その子が過ごしやすい環境を作っていくんです」
――保育所等訪問支援と他の障害児支援との違いは何でしょうか?
「よく誤解されるのが、保育所等訪問支援は『できないことをできるようにする訓練の場』だと思われることです。でも、そうではないんです」
「児童発達支援や放課後等デイサービスは、確かにお子さんの『できない』を『できる』に変えていく訓練の場所です。一方、保育所等訪問支援が目指すのは、むしろ集団生活の方を変えていくこと。障がいのあるお子さんに合わせて、環境や活動の流れを調整していくんです」
「ここで大切なのは、決して健常のお子さんに不便をかけることではないということ。むしろ、誰も我慢することなく、全ての子どもたちが自然に参加できる方法を見つけていくんです」
――障害児加配の先生との違いは?
「この質問をよくいただくんですが、大きな違いがあります。加配の先生は、障がいのあるお子さんを手伝うことで、既存の集団生活に合わせていくことが多いんです。もちろんそれも大切な支援ですが」
「私たちは違う視点で支援を行います。『このお子さんが参加できないのは、活動の進め方に課題があるのかもしれない』『この場面は、こう変えれば全員が楽しく参加できるんじゃないか』。そうやって、集団活動そのものを見直していく。それが保育所等訪問支援の特徴です」
――現場の反応はいかがですか?
「最初は『専門家が来て、私たちの保育を評価するの?』と不安を感じる方もいらっしゃいます。でも、私たちが大切にしているのは、現場の先生方と一緒に考えること。『こんな場面で困っています』『この子、どう関わればいいでしょう』。そんな悩みに寄り添いながら、一緒に解決策を探っていくんです」
――効果は見えてきていますか?
「はい。例えば、集団活動になかなか参加できなかった子が、少しずつ参加できるようになってきたり。周りの子どもたちも、自然とその子に声をかけたり手伝ったりするようになる。そういった変化が見られます」
「でも、もっと大きな変化は先生方の意識かもしれません。『この子は困った子』という見方から、『この子はこういう特性があるんだ』『こんな支援があれば、できることがあるんだ』という視点に変わっていく。それが、本当のインクルージョンの第一歩だと思っています」
――今後の展望は?
「まずは、より多くの園や学校に訪問支援を広げていきたいです。でも、それ以上に大切なのは支援の質。私たちが目指すのは、『この子たちに何ができないか』ではなく、『この子たちに何ができるか』を見つけ出すこと。そして、それを周りの大人や子どもたちと共有していくこと。その積み重ねが、インクルーシブな社会づくりにつながっていくと信じています」
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