学生だから、学生団体で、学生の生きづらさに真摯に向き合いたい/メンバー「いな」にインタビュー(前編)
ユースリンク(YouthLINK)は、生きづらさ・大学への行きづらさを抱える学生が分かち合う場を作る学生団体です。
2011年から東京都で、新型コロナウイルス感染症が流行してからは東京都での対面/オンラインの両方で、活動しています。
ユースリンクのメンバー「いな」にインタビューをしました!
前編では、ユースリンクに加入したきっかけや、活動していて楽しかったこと・大変だったことを紹介します。
まず、自己紹介をお願いします。
▶いな:学生メンバーの「いな」です。ユースリンクには2020年の11月から入っています。2022年8月現在は大学4年生で、2022年9月に大学を卒業する予定です。
生きづらさに幅広く向き合いたくて加入
ユースリンクに加入したきっかけは何ですか?
▶いな:まず、わたしがユースリンクを知ったきっかけは、大学2年生のときに大学の先生が「生きづらさに関連した学生団体なら、ユースリンクがあるよ」と教えてくれたことです。
そのときわたしは大学で生きづらさに関するサークルを立ち上げたばかりで、すぐにユースリンクに入ることは難しかったのですが、いつか学生団体に所属したいと思ったのを覚えています。
また、わたしは大学1年生のときに半年間、精神疾患を理由に大学を休学しています。
自分の大学でサークルを作って会長の役割を全うして、会長を後輩に譲るめどが立ってから、休学をしていた時期のモヤモヤを思い出しました。
ウェブ検索で「休学」を検索したとき、留学やインターン、ワーキングホリデーといった、いわゆる「精神疾患とは逆のようなもの」ばかりがヒットして、落ち込んだんです。
大学を飛び出て「生きづらさ」に幅広く向き合いたい思いがあったので、ユースリンクに加入しました。
分かち合いの場の運営や広報を担当
ここからは、ユースリンクの活動についてお聞きしたいと思います。いなさんはユースリンクの中でどのようなことを担当していますか?
▶いな:分かち合いの場の運営に関することは、月に2回あるユースリンクの定例の活動のなかで、わたしを含めたメンバー全員でやっています。
分かち合いの場におけるそれぞれの役割を覚えたり教えたり、やるべき作業があれば会議のなかで分担しています。
それとは別に、ユースリンクには係があります。ユースリンクには、代表がいません。各々がやると決めた役割を主体的に進めています。
わたしは係として、SNSやメールの対応、noteやメールマガジンの執筆などといった、ユースリンクの魅力を外部に伝え、外部の人とのやりとりをする役割を担当しています。
力になれたり、仲間ができると嬉しい!
活動をしていく中で、嬉しいことや嬉しかったことは何ですか?
▶いな:嬉しかったことは大きく分けて二つあって、一つは生きづらさを抱える学生の力になれたり、仲間ができたりしたことです。
ボイスシェアリング(ユースリンクが開催する分かち合いの場)に来てくれることは嬉しいことですし、はじめて出会った人とわたしたちが自分の思いを分かち合うことができたと思ったときは特に嬉しいと思っています。
あとは、ユースリンクに加入するか迷っている人が学生メンバーとして加入してくれることを決めてくれたときに、わたしたちがやっていることを一緒にやりたいと思ってくれる後輩たちができたことを、とても嬉しく思いました。
もう一つは、生きづらさに向き合う地方公共団体の職員さんやインタビュアーさんとお会いできて、思いを共有することができたときです。
活動を通じて、本の取材を受けたり、新宿区の自殺対策の委員としての活動をするなかで、自分自身が生きづらさを抱えて自殺未遂をした経験などが社会で昇華されていくので、誇らしく思っています。
宣伝で結果を出せないと悔しい……
お話を聞いていて、活動を通じた人との繋がりを楽しんでいらっしゃるのかなと思いました。反対に、活動していて大変なこととか、ちょっとしんどいなと思うこととかはありますか?
▶いな:まず、頑張ったのに結果が出せなかったときは、しんどいなと思っています。
例えば、生きづらい学生は孤立していることも多いと思うので、ボイスシェアリングの開催前にSNS係として宣伝を精一杯やっても当日誰も来てくれなかったとき、努力をしたのがちょっと無駄になっちゃったのかもしれない……みたいな気持ちになるので、悔しくなります。
あとはメンバーとして加入するかどうか迷っているって人に説明をして、活動見学に来てもらったあとに連絡が取れなくなったり、「やっぱり加入しません」という連絡をもらったりすると、自分の力不足や、団体の活動しやすさという土壌を整備し切れなかった悔しさを感じます。
しかし、そうした上手くいかなかった経験も糧にして、メンバーと話し合って活動を工夫して、改善に努めています。
思い出に残る、先輩とのやり取り
色々と活動していく中で、いなさんの中で特に思い出に残っていることや、何か印象に残っている出来事があれば、お話できる範囲でお聞きしたいです。
▶いな:ユースリンクの活動の中で印象に残っていることは、2021年12月、わたしが急遽、想定と異なり就職活動をしなければならなくなった時期のことです。
わたしには発達障害があるうえ、そのときの学生メンバーは大学院の修士2年生の先輩とわたしだけでした。修士2年生の方は、修士論文を書かなければいけなくて、忙しい時期みたいでしたし……。
その先輩メンバーが大学院を卒業したら、ユースリンクの学生メンバーがわたし1人になってしまうという人手不足の時期に、毎月2回のユースリンクの定例活動に出ることすら大変になったことに気が付きました。
さらに、先輩メンバーが活動を休むだろうと思って、わたしが全部やらなきゃ!って焦ったんですよ。
それでも、わたしはそういうときに「わたし休みます」って絶対に言えないタイプで、責任を自分1人で背負って全部やろうとしてしまう。
誰かがつらいんだったら自分がやるってどうしても言ってしまう性格をしてるから、絶対にわたしから言えなくて。
その時期に先輩が「大石さんもつらいけど、自分からは言わないじゃないですか。だから、2人で毎月交代でやりましょう」って言ってくれたんです。
そのときは、自分が休息が欲しいと言えない性格っていうことすら、活動を通じてわかってもらえたのかなと思い、嬉しかったです。
正直、わたしが加入した2020年はコロナ流行や、先輩メンバーの卒業論文・修士論文・就職活動が重なってしまっていました。
わたしは「生きづらさ」に関する活動の経験者だったので、即戦力としてしか捉えられていないのではないかと1年間以上悩んでいました。
コロナ禍で活動しかできてないなかでも、活動を通じて、私がどういう人なのか理解されていると思えたのは、すごく嬉しかったです。
(後編に続きます)
学生団体YouthLINKの法人活動理念
「ここにいてもいいんだ」。ひとりでも多くの学生がそう思えるように。
2011年10月、NPO法人自殺対策支援センターライフリンク(以下、NPOライフリンク)の学生意見交換会で、会に参加した学生が「休学していたとき、生きるのがものすごくしんどかった」という本音を語ったことから誕生しました。
そのため、YouthLINKは、NPOライフリンクの学生プロジェクトとして、NPOライフリンクのバックアップを受けながら、学生主体で活動を行っています。
設立当初は「休学生」を対象に活動を始めましたが、取り組みの中で学校に「行けている」「行けていない」は表層的な違いであり、学校に通えていても「生きづらさ」を抱えている学生が決して少なくないことに気づきました。
そこで、より視点を広げ、「様々な悩みを抱えながら周囲に本音を話すことができず、ひとり抱え込んでしまう……」そんな学生の居場所づくりに対象を拡大して、活動に取り組んでいます。
YouthLINKのメンバーも、それぞれが様々な悩みを抱えてきた学生やOBOGです。自分たちが「あったらいいな」と思える場を、日々試行錯誤しながら作っています。
「ここにいてもいいんだ」。ひとりでも多くの学生がそう思えるように。YouthLINKはこれからも活動を続けていきます。