プラごみが流出する量より減る量が多い社会をつくろう。わたしたちは海洋プラごみ問題を解決すべく活動している一般社団法人です。

一般社団法人オーシャンスイープ協会

活動理念

わたしたちの理念とビジョン

<わたしたちの理念>

プラごみが流出する量より減る量が多い社会をつくろう


<私たちのビジョン>

 今の社会構造においては、漁師さんが操業中に海ごみを拾ってくると、海洋投棄規制条約によって処分費用を自己負担することになります。それでも海を汚したくない漁師さんは、海に捨てられているプラスチックごみを積極的に拾っていらっしゃいますが、陸から海へ流出するプラごみの量は多く、とても個人では負担しきれません。また、海ごみは陸上のごみに比べて処分費用が数十倍もかかるため、海岸の管理を担っている地方自治体もなかなか公共事業化ができずにいます。一方、プラスチックは紫外線や波によってサイズこそ小さくなりますがほとんど分解はされないので、人の手で回収しなければ海にはマイクロプラスチックが増える一方です。

 当社団では、滞っている海洋プラごみの回収を推進することや、プラごみが海や川に流出しないような生活習慣を拡めることで、海や川にプラごみが流出する量より減る量(回収量)が多い社会を実現させて、海のプラごみを心配しなくてよい未来を子供たちに引き継ぐために活動しています。

 海洋プラごみ問題の現状を考えれば、私たちのビジョンはイチ民間団体には荷が重い壮大な夢のようにも思えますが、微力であっても行動することに意味があると思っています。ひとり一人の小さな積み重ねや微力が集まることによって世の中が良くなっていくと思います。

 わたしたちの活動は、持続可能で豊かな海を取り戻そうとする活動であり、国連が推進するSDGs14番目の目標「海の豊かさを守ろう」を達成しようとするものです。


海洋プラごみの課題

1)プラごみ増加が私たちの健康も脅かしている

 プラスチックの分子構造はとても安定していて、紫外線や波によってサイズが小さくなっても分解されているわけではありません。そして、海に漂流するプラスチックは『POPs(残留性有機汚染物質)』と総称される有害物質等を吸着する性質があるため、小さくなったマイクロプラスチックを小魚などの小さな動物が食べ、それを食べる大きな生物の身体にPOPsが濃縮されて蓄積されていきます。この食物連鎖により海洋生物の健康被害が懸念されていますが、食物連鎖の最上位にいるのが私たち人類なので、私たちの健康も危険にさらされています。

 POPsは、ヒトのホルモンと構造の一部が似た形をもつ化学物質であることから『環境ホルモン』とも呼ばれ、環境省がリストアップしただけでも70種類あります。環境ホルモンは、本来はホルモンと結合することで信号を受け取る受容体(レセプター)という器官にあたかも本物のホルモンのように結合してしまうため、ホルモンのバランスが崩れ、身体の健康を保つ働きが弱まって生殖機能や甲状腺機能などに重大な影響を及ぼすと言われています。また、性別や年齢によって受ける影響には特徴があります。

◆懸念されているPOPsによる健康被害

○女性の場合<乳がん・子宮内膜症の増加

プラスチックから溶け出したノニルフェノールによって乳がん細胞が増殖してしまう。

○男性の場合<生殖機能低下

精子数の減少・精子の濃度低下してしまう。

○胎児の場合<発育異常・知能への影響

発育初期に大きく関係するため、水中に残留したPCB(ポリ塩化ビフェニル)は知能発達への影響がある。POPsの蓄積を気にせずに、おいしい魚を安心して食べられる未来のためにも、プラごみを海に放置してはいけません。



2)高い処分コストと法律の壁

 漁師さんが操業中に海ごみを拾ってくると、海洋投棄規制条約(ロンドン条約)によって処分費用を自己負担することになっています。それでも海を汚したくない漁師さんは、海に捨てられているプラスチックごみを自費で処分していますが、海ごみは陸上のごみに比べ塩分や水分のために処分費用が数十倍もかかっています。とても個人では負担しきれません。

 また、漂流しているプラごみは波間を流れているため責任の所在が未確定で、海岸を管理している地方自治体も税金を投入する事業として取り組むことには躊躇しています。さらに、漁師の負担にならないように拾ってきた後の処分を第三者が善意で引き受けようと考えても、産廃法の制約があり移動も簡単ではありません。漁港から処分施設まで運搬するために、拾ってきた海ごみを引き取ろうとすれば「産業廃棄物収集運搬業」の免許が必要になりますし、たとえ無償であっても熱分解処分するには「産業廃棄物処分業」の免許がなければ違反になってしまいます。

既にそれらの免許を持っているのは産廃事業者であって、社会問題の解決のためと言っても本業そのものですから安く引き受けてくれることはほとんどありません。

 海ごみの処分を格安で処分を引き受けてくれるのは、ごみ処分が本業でない企業であり、当然に他者のごみを引き受けるための産廃免許は持っていません。ボランティア精神で海ごみを引き受けようとしても、わざわざ免許を取得しなければなりません。



3)この10年で状況は急速に悪くなった

  拾った後の処分費用の負担が大きすぎて、地方自治体も漁師さんも本格的な回収に手を出せずにいますが、プラスチックの使用量が年々増えるに従って、不法投棄や災害によって陸から海に流れ出る海洋プラごみ量も、この10年で急増してしまいました。今や世界で年間800万トンも流出しています。

 このままでは海ばかりではなく、地球全体の生態系も危ないと言われ、国連でも「持続可能な開発目標(SDGs)No.14」として取り上げられるほどに状況は悪化してしまいました。そして、流出は今も加速しています。流出する量より減る量が多くなるよう、逆転させるアクションが必要です。



4)海洋プラごみは半分以上が家庭ごみ、誰もが他人事ではない

 たとえば、屋外のごみ箱からこぼれ落ちたペットボトルは風や雨に流されて川に流れてしまうことなどがフィールド調査で指摘されています。

 消費者のひとり一人が、海洋プラごみの原因になるような生活習慣がないか自己確認して、改善すべきところを改善していくことで、川や用水路を通じて海に流れてしまうプラごみも減らしていくことができます。調査によると海洋プラごみのうち51%が家庭ごみ、34%が漁業ごみ、15%が農業や工業からのごみです。海ごみの半分以上が街由来の生活ごみなのに、処分費用は海で働く人たちと海岸市区町村だけが負担させられている状況です。特に内陸部では海が身近でないため認識が薄いと言わざるを得ません。



海洋プラごみを減らしていく解決策

1)漁師さん達が気軽に漂流ごみを拾える体制をつくる

 海ごみを減らしたいというのは海で働く人たちとっても切実な願いです。でも、拾った人が処分費用を全負担する現在の社会構造では、とても個人や小さな市区町村では負担しきれません。

 今のままでは気軽に拾うことはできませんが、もしも見つけたときに費用負担を気にせず拾える社会構造(陸揚げ後の無償引き受け体制)がつくれれば、海で働く人たちが操業中に海ごみを回収できる道が開きます。


2)低コストで海ごみを分解できる処分チェーンをつくる

 上記の社会構造の問題が今まで解決できなかった主な理由は、海ごみは塩分や有機物や水分が含まれているために処分費用が陸上ごみの数十倍かかる、高コストの問題が未解決だったからです。

 今までの高コスト構造のまま海ごみの回収処分を本格化すれば費用負担する者は破綻してしまいますが、人の手をかけないとできない分別作業や塩抜きをせずに処分できる技術が確立され、その技術を使った処分チェーンが社会実装されれば、持続力のある回収活動ができます。

 さらに、その処分チェーンの終端が廃棄ではなく資源として再利用するサーキュラーエコノミー化できれば処分チェーンは資源のサプライチェーンになります。究極的にはその実現をめざします。



3)プラごみ流出の原因になる生活習慣を変えていく

 現在はプラごみの流出量が回収量よりも多いという、まるで赤字会計のような状態で持続性がありません。現代に生きる私たちは、海にプラごみが流出しない生活習慣を身につける必要があります。たとえば、できるだけプラスチックを使わないとか、使うときはリサイクルしやすい単一素材のものを選ぶとか、再資源化できる処分方法を選ぶなどサーキュラーエコノミーに合致した習慣です。

 それは、利便性を求めて行き着いた直線型経済(リニアエコノミー)を覆していくことですから、我慢を受け容れることでもあり、現状の危うさが一般認知されなければ実現できません。



わたしたちのミッション

1)プラごみ流出マップで社会啓発

 海ごみに関心が薄い内陸部でも水路や川を通じて海に流出してしまうので海洋プラごみの原因になっています。そこで、一人でも多くの人に海洋プラごみ問題に関心をもっていただくため、地元の川や海岸、港に流出したプラごみを撮影して提供していただく方を募集しています。海や川で撮影した流出プラごみの写真や動画を送っていただき、当社団が運営している「プラごみ流出マップ」に掲載して一般公開しています。

 このサイトで募集している写真ボランティアが、まさにこの活動であり、2023年2月13日に広島で開催された「プラスチック・スマートシンポジウム2023」では、環境省から令和4年度プラスチック・スマート優良事例アワードの年間最優秀事例賞を授与されました。


2)海洋プラごみ処分チェーンを社会実装

  持続可能であり、全国各地で再現可能な 流出プラごみを減らしていく「海洋プラごみ処分チェーン」が社会実装されるよう活動しています。

 今はまだ予備調査段階ですが、「海洋プラごみ処分チェーン」は、プラごみを予分別や塩抜き工程なしで熱分解または再資源化できる設備を中心に、トラック等でルート回収が可能な圏内にある漁港を定期搬送便でつなぎ、海で働く人たちが業務中に拾ってきたプラごみを、大きな個人負担なく熱分解や再資源化のプロセスに送り出していけるしくみで、当社団はそれを社会実装させていくための活動をしています。また、そういう処分チェーンを全国各地に増やしていくことを目標としています。

 まずは実装実験を行い、実証実験で処分費用や実態、問題点を把握したら、得られた知見をもとに持続的に利用できる海洋プラごみ処分チェーンを構築していきます。恒久モデルが1ヶ所が構築できたら、それをモデルケースにして同様の処分チェーンを全国各地に増やしていく活動をします。いつの日か、全国2780ヶ所のすべての漁港が、どこかの海洋プラごみ処分チェーンにつながっている状態をめざします。


3)流出防止や循環型社会に役立つ情報発信

 プラごみ流出マップの他にも、海や川に流出しない捨て方などの個々人の生活がプラごみの流出防止に役立つ情報、廃棄せずに再資源化して循環させていく社会の実現に役立つ情報、マイクロプラスチックにならないようプラごみを分解して処分する有効技術の情報などを発信していきます。

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ボランティア/インターン募集

  

活動実績

2018年
IPCCの1.5度特別報告書による衝撃を受けて活動開始

2018年10月20日

IPCCによって発表された「1.5度特別報告書」による衝撃で何かするべきと活動を開始。CO2問題も意義深いと思いましたが、まだ因果関係が証明されていないところがあるので、ハッキリ目に見えて人類の悪影響を受けている海のプラスチックごみ問題にフォーカスして情報収集から進めました。

2021年
一般社団法人を設立

2021年02月22日

海についての知見をもつ大学や行政、漁業関連従事者等にヒアリングを重ねた上で、本格的な活動前の任意団体としての準備期間に区切りをつけ、一般社団法人を設立しました。

写真ボランティア募集開始

2021年09月23日

身近な海や川に流出したプラごみを撮影した写真を当社団に提供していただく「写真ボランティア」の募集を開始し、応募いただいた写真・動画は『プラごみ流出マップ』や、facebook、twitter、Youtubeチャンネルで公開しています。

電子書籍を上梓

2021年12月14日

海洋プラごみ問題を解説した電子書籍『海のプラごみを回収できない本当の理由』(著者:白野圭俊)を電子書籍としてAmazon Kindle Booksに上梓しました。

2023年
環境省から表彰

2023年02月13日

写真ボランティアの皆さんのご協力により、プラスチック・スマートシンポジウム2023の『プラスチック・スマート優良事例アワード』において、「広める」部門の最優秀事例として表彰されました。この賞は、写真ボランティアにご参加いただいた皆さまお一人お一人が表彰されたものを、当社団が代表して受賞させていただいたものです。

法人概要

団体名

一般社団法人オーシャンスイープ協会

法人格

一般社団法人

HPのURL https://ocean-sweep.com/
代表者

理事長 山本知子

設立年

2021年

Twitterアカウント oceansweep1
FacebookページのURL https://www.facebook.com/OceanSweepAssoc
電話番号

050-3464-4702

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