1. ホーム
  2. ストーリー一覧ページ
  3. インタビュー | 言語を超えたコミュニケーションで人生をより豊かに
2025/09/24

インタビュー | 言語を超えたコミュニケーションで人生をより豊かに

https://future-gateway.jp/interview/furuyamamasahiro/
※FUTURE GATEWAY公式サイトのクローズに伴い、activoに掲載します。
※2023.02.28 (TUE) 掲載時点のものです。

2021年より始動した「FUTURE GATEWAY」は、KDDI総合研究所がこれ まで培ってきた先端技術を生かしながら、先進的なライフスタイルを実践する人々 と共に、これからのスタンダードをつくっていくための共創イニシアチブです。当シリー ズ[MY PERSPECTIVE]では、あらゆる分野で未来をつくる活動をしている FUTURE GATEWAYに集うメンバーと一緒に理想の未来について考えていきた いと思います。

今回登場するのは、学生時代の留学生寮での経験をもとに、言語を超えるコミュ ニケーションのあり方を模索するt'runnerの古山正裕。言葉で伝えるのが難しい 五感を言語以外の方法を用いて表現することなどに取り組む彼が考える越境テー マと、目指す未来について聞きました。

学生時代の留学生寮での経験がきっかけに

画像

FG: まずは、古山さんのこれまでについて教えていただけますか。

古山: 千葉県で生まれて、自然豊かな環境で育ちました。教員一家だった ことと、中学校の理科の先生がとても面白かったこともあり、理科の 先生になりたいと思っていたんです。親元を離れ新潟県の大学へ進学 し、理学部で主に生物の遺伝について学びました。そのまま大学院へ と進学し、新潟で6年間の学生生活を送ることになりました。

あるとき、学内のニュースレターで留学生寮のコミュニティマネージャーを 募集していることを知りました。海外旅行や留学をしていたこともあっ て興味を持ち、そこで留学生のサポートをすることになったんです。120 人くらいの留学生それぞれの勉強の相談に乗ったり、生活支援をし たり、お互いの言語について学び合ったりする楽しい日々でした。

FG: それが現在につながってくるわけですね。

古山: はい。今の活動につながる大きなきっかけになっています。というのも、 寮にいると「病気になったらどうすればいいか」ということをよく聞かれ たんです。たとえば、台湾からきた女の子が「矯正歯科に行きたい が、情報がない」と言っていることがあって、たしかに病院自体は検 索すれば出てくるのですが、外国語での対応をやっているのかどうかが わかりません。日本語がわからない留学生がこういう情報を得られるサ イトがないことを疑問に思って、大学院生のときに立ち上げたのが、ヘ ルプユープロジェクトです。

最初は一人で病院に電話をしたり封書を送ったりして、外国語での 対応可否やサイトへの掲載の許可取りを続けました。少しずつ情報を 集めて、多国籍クリニック検索アプリをつくったんです。はじめは大学 の周辺からスタートして、新潟県全域にエリアを広げていきました。

FG: 卒業後もそのままプロジェクトを大きくしていく計画でしたか?

古山: そうですね。本当はプロジェクトを大きくしていくつもりでしたが、収益 モデルに悩んだことと、今後のサービス拡大のためにもセールスなどのス キルを身につけたい思いもあって、一度就職することにしました。そう はいっても、プロジェクトも道なかば。新潟県で始めたサービスをやりき るためにも新潟県内で就職先を探して、ご縁があった建築設計事務 所でセールスとして働くことになりました。最初はいわゆるアナログ営業 をやっていましたが、いまは社長直下でインサイドセールスを担当してい ます。現在も自分のプロジェクトを続けながら、普段は会社員をやって いるんです。

FG: 現在の拠点である柏へはどのような経緯で?

古山: 新潟でのプロジェクトがある程度形になってきたタイミングで、拠点を 関東にも広げたいと思いました。それで会社にお願いをして、会社の もう一つの拠点である千葉県柏市に異動させていただきました。実家 は千葉の外房ですが、柏へ来たのはこのときがはじめてです。私が今 住んでいる「柏の葉」は時間の流れがゆったりしていて、治安もいい し、とても住みやすい街だと思います。

言語を超えたコミュニケーションを育てていく

画像古山正裕(ふるやま・まさひろ) / ヘルプユープロジェクト代表。1991年千葉県長南町生まれ。学 生時代の留学生寮コミュニティの運営に携わったことがきっかけで『多国籍医療』をテーマとした 「HELP YOU PROJECT(ヘルプユープロジェクト)」を立ち上げ、コミュニケーション設計やアプ リ開発、共創プロジェクトに取り組む。普段は会社員として、事業会社でインサイドセールスに携わる。

FG: 社会人になってからもプロジェクトは継続してきたわけですが、近年は どのような活動を?

古山: アプリに加えて、意思疎通の手助けとなるコミュニケーションブックを本 格的につくり始めました。もともと私はコーディングもデザインも専門で はないので、社会人になってからメンバーを増やして規模を拡大してき ました。クリエイティブ・ディレクターやグラフィックデザイナー、イラストレ ーター、翻訳家のような専門的な方々に加えて、医学の監修をしてく ださる大学の学長なども参加してくださり、今は常時6人のメンバーで プロジェクトを進めています。普段働いている会社にも理解をしていた だいているので、うまく頭を切り替えながら両方の仕事を続けていま す。

FG: サービス拠点も広げていくのでしょうか?

古山: そうですね。今後も拠点を広げていきたいです。現在も静岡県浜松 市の方からお声がけをいただき、助成金などを活用しながら、多国籍 クリニック検索アプリのエリア拡大に向けて一緒に取り組んでいるとこ ろです。今拠点にしている柏市でもサービスを展開したいですし、東京 23区のような人口の多いところでもチャレンジしてみたいですね。た だ、一つずつの地域で病院との連携が必要なので、簡単に広げてい けるものでもなくて、その点は難しいところです。

FG: プロジェクトを続ける中での気づきはありましたか?

古山: 相手が外国人だという理由だけで抵抗感を抱く病院関係者も多く、患者が日本語を話せても病院として受け入れを進んで行わないことも あります。アナログ営業をするなかで、外国人患者の受け入れはするも のの、ウェブアプリへの掲載は控えたいという声もありました。新潟で 調査をしたところ、外国人を受け入れて、かつアプリに掲載可能な病 院は全体の約15%だったんです。その背景には、通常と比べてどうし ても診察に時間がかかってしまうという理由があるようです。そこには 単なる言語の壁だけではなくて、もっと大きな文化的な側面もあると 感じました。だからこそ、言語的なコミュニケーションをサポートするのは もちろん、文化的な側面へのアプローチも増やしていきたいなと。最近 ではジェンダーや国籍をテーマにした対話のための場づくりにも興味があ ります。

五感の非言語化で人生をもっと豊かに

画像

FG: FUTURE GATEWAYに参加をすることになったきっかけは?

古山: もともと知り合いだった加藤翼さんがTwitterでt'runner(ランナー:FUTURE GATEWAYのコミュニティメンバーの呼称)募集の投 稿をしていたのをきっかけに応募しました。自分のプロジェクトとして取 り組んでいるのは主に医療のフィールドですが、それ以外の場面も含め て言語が足枷になる世界をなくしていきたい。言語にとらわれない視 覚や聴覚、触覚の感覚コミュニケーションを軸にプロジェクトに取り組 みたいと考えました。そんな非言語アプローチが私の越境テーマにもなっ ています。

FG: 「ことばのほぐし」というプロジェクトを始めました。ご自身の活動が 根底にあると思うのですが、ここではどのようなことを考えていますか。

古山: 病院でのコミュニケーションの難しさの一つに、感覚の言語化がありま す。たとえば「どのように痛いのか」と聞かれて、「ズキズキ」みたい なオノマトペを伝えることは簡単ではありません。これまでコミュニケーシ ョンブックでもこうした感覚の図示による非言語コミュニケーションに取 り組んできたのですが、それをいろんなジャンルでチャレンジしてみたいで す。料理においても、たとえば、カレーの味を表現するシーン。おいしい 味を表現するのは簡単ではないですよね。他にも、映画を見たときの 感情の伝え方。生地の手触り感。五感にまつわる表現上の問題は、 言語にかかわらず発生すると思うんです。こうした表現力を一般化す ることで、言語が違っても意思疎通できるような環境をつくっていきた い。五感の非言語化によって、あらゆる人の人生をもっと豊かにして いきたいと思います。

FG: 具体的にはどのようなことをする予定ですか。

古山: まずは普段から表現に取り組むクリエイターの方をお呼びしたワークショ ップを実施し、非言語での表現の仕方を学ぶと同時に、その表現に 至ったプロセスを一般化していきたいと思います。今回のワークショップ では、味覚・触覚・聴覚の三種類でクリエイターの方にアウトプットして いただきました。過去の体験を音色(音符)として書き出す、シャキ シャキの多さ・少なさといった食感の分析や酸っぱさの程度といった味 覚の数値化を行う、「美味しい」「不味い」といった感覚を記号 や数値で表現するなど、皆さんのアウトプットの仕方がバラエティに富 んでいて面白かったですね。

FG: ワークショップではどのような気づきがありましたか?

古山: 今後こうした手法を一般化するにあたって、個性でもあるアウトプット の仕方に制限をかけないようにしたいと、あらためて思いました。一般 化できていないのは、アウトプットの仕方が分からない、日常的に表現 する機会・場がないことが要因だと実感しました。そこで、たとえば街 歩きや料理、スポーツ観戦などの日常体験から、その空気や肌触り、 味、感情をアウトプットして記録に残す。色や記号、音を組み合わせ ることで、その人ならではの日常を物語化する。そんな一連のプロセス を一般化できるよう、この後のフェーズで実験していきたいです。

また、ワークショップでは、体験した出来事を誰かに伝えたいという欲 求や、その人の内面を知ろうとする“愛を見つける”ような行為も大 切なテーマだと話題に上がりました。家族や友人、恋人、ひいてはまだ 出会ったことのない他人、世界中の誰かに、自身が感じた体験を伝 える。非言語コミュニケーションを通してそんな対話を日常生活の中で 実現できたら、より一層思いやりを持って誰かと接することができると 感じています。

FG: では最後に、FUTURE GATEWAYでの取り組みやご自身の活動を 通じて目指す未来について教えてください。

古山: 誰もが言いたいことを難なく伝えられる、コミュニケーションが取れるよ うな未来を目指しています。それは言語だけではなくて、場合によって はジェスチャーだったり、音だったり、絵画かもしれません。日常生活は もちろんのこと、私たちがプロジェクトで取り組む医療現場や、災害の ような緊急事態においてもこうした言語を超えたコミュニケーションがあ ることで助かる人がいることは間違いありません。非言語コミュニケーシ ョンを前提に、最終的には文化的な違いで偏見や差別が起こること のない世界をつくっていきたいです。

あなたにできる応援
応援イラスト
応援がこの団体の支援に繋がります
あなたの応援(シェア)で想いが広まり、仲間が増えるキッカケになるかもしれません。何より活動していくエネルギーをいただけます…!
ユーザーアバター
団体アバター
一般社団法人つつつつつ

一般社団法人つつつつつの法人活動理念

【Mission】

いろんな「つ」が集まって、関わりあって、社会が少しずつ、よく巡っていく。

5つの“つ”

つ つ く — 社会の課題や身近な違和感に、やさしく問いかける

つ た え る — 想いを相手に届くかたちにする

つ た わ る — 相手に届き、理解や共感が生まれる

つ な が る — 関わり合い、関係性を育む

つ づ く 、 — 関係や活動が持続し、次の活動へ続いていく


【Vision】

言語の壁を非言語で越える。

We believe HI-GENGO behind GENGO.

クリエイティブの力で、クリエイターと共に、新たな価値がめぐる未来をつくります。


【Value】

My activities are___(私の活動=プロジェクト)

わたしたちが普段行なうことは“仕事”ではなく“活動”と呼んでいます。行ないたいことはどんなことなのか、自分の言葉で語れることが必要です。遊び心も忘れずに。Let’s do an activities for fun!


Have a sense of ownership(一員の顔とリーダーの顔を)

メンバーは組織の一員であると同時に、組織のリーダーでもあります。自身のプロジェクトだけでなく、組織全体の責任を持って活動します。We are all drivers of our mission.


Celebrate together(お祝い事はみんな一緒に)

組織全体の成長、そして何よりメンバーへの感謝・賞賛する機会はたくさんあります。褒め合う機会はみんなで盛大に。誕生日や記念日も。You are the best!