「息子をサンタのお手伝いにスカウトしてほしい」。7年前にプレゼントを届けたあの子が、サンタさんを卒業した話。
目次
はじめてのボランティアは、サンタクロースでした。
2012年のクリスマス・イブ、はじめてサンタさんになった。これが僕にとってはじめてのボランティア。
当時、岡山県内にある大学に通っていました。どこにでもいる普通の大学生。
高校までは勉強さえしていればよかったけど、大学生になってからは「勉強以外の何か」が求められているような感覚。
でもその何かが見つからないまま、何か夢中になることもなく、時間は流れていった3年生の秋。
「このまま大学生活も終わっちゃうのかな。。。」
そんなことを思い、ぼんやりとした焦りもありながらも、特にやりたいこともない。
そんな時、偶然知った「イブの夜、サンタに変装して、申込があったお家の子どもへプレゼントを届けに行く」というボランティア活動「チャリティーサンタ」。
「何か楽しそうだし、これならば僕にもできるかもしれない」
そんな気軽な気持ちでネットから申し込み。
結果、それが本当に最高の経験になった。
まぎれもなく、僕のクリスマス史上、最高の一日だった。
「何者でもない自分がサンタクロースになるだけで、こんなにもたくさんの人が笑顔になってくれるんだ。世の中にこんなに幸せなことがあるのか。。」
と感動したのを今でも鮮明に覚えています。
次の年から、岡山支部の運営スタッフ(通年ボランティア)となり、今でも活動を続けています。
※NPO法人チャリティーサンタでは、支部制度を作り全国25以上の都道府県で活動しています。(2020年6月現在)
「息子をサンタのお手伝いにスカウトして欲しい」
チャリティーサンタでは「子ども第一主義」の理念のもと、なるべく各家庭のニーズに寄り添って、ひとつひとつの家庭にオーダーメイドで対応するようにしています。
そんな中で、2019年のクリスマス・イブに、特別な子どもに届けることになりました。
そのお家は、7年間ずっとリピーターとして申込し続けてくれ、親御さんとも顔見知りな状態に。そんな中で、今回は特別なある依頼がありました。
それは、今年でサンタさんを卒業する子どもにむけて、「サンタのお手伝いにスカウトして欲しい」というもの。
その子は、物心が付く前の1歳からチャリティーサンタのサンタさんが訪問し続け、サンタさんのことを心底信じてくれています。
元気な子ですが、サンタさんが訪問すると直立不動。気をつけの姿勢で無口になっちゃうけど、ずっとサンタさんのお話を聞いてくれるような「サンタさん、リスペクト!!」な子です。
毎年、依頼をいただくたびに、「あ!今年もまた申込があった!来年も信じてくれるように続くかな?」とドキドキしていました。
そして、今年、お母さんからメッセージをいただきました。
そこには、今年でサンタを卒業しようと思うこと、が書かれていました。
理由は、サンタの正体に気づいたからではなく、
今年サンタさんに何が欲しいか聞くと、
「ぼくはサンタさんにプレゼントをもらうには大きくなりすぎたから、サンタさんが来てくれるぶんには嬉しいけど、望むものは何もないよ。」
と答えたからと。
そして、サンタさんのお手伝いをすることに「自分もできるかも」と前向きなので、スカウトして欲しい、と書かれていました。
このメッセージを頂いた時、立派な子になったなあと誇らしい気持ちと、とうとう卒業するのかと寂しい気持ち。そして、こんな大役を誰が担えるのだろう、、、という悩ましい気持ちになりました。
その時は、自分がサンタになるということは全く考えていなかったのですが、サンタさんと訪問家庭のマッチングの結果、偶然僕が彼の元へ訪問することに。
クリスマスイブまでの数日間、どんな風に「卒業」と「スカウト」を伝えるか必死に考えました。
またサンタさんが家庭を訪問する上で必ず伝えている、”褒めて欲しいこと、応援して欲しいこと※”も、今の彼にとってとても大切なことだったので手抜きはできません。
※申込時に保護者から記載してもらい、サンタさんからの言葉として伝えています。
彼が興味のあること・得意なことをもっと大切にできるように
キミのことを大切に思っている人たちがいることに気づけるように
自分自身のことをもっと好きになれるように。
ただサンタさんから卒業するのではなく、
素敵な彼のまま、もっと素敵な彼でいてくれるように。
いつかサンタクロースとして再会できるように。
彼へを想いを馳せているうちに、あっという間にクリスマスがやってきました。
サンタさんに望むものは何もないけど、サンタさんが選んでくれるものならなんでも嬉しい。
そしていよいよクリスマス・イブ当日。
少し道に迷ってしまい、予定より少し遅くお家に到着しました。
チャイムを押すと、落ち着いた様子で彼がドアを開けて迎え入れてくれました。
玄関で少し話をしていると、中へどうぞと招き入れられました。
サンタになった僕は、片膝を付き、彼の目線に合わせてから、何度も何度もイメトレをしていたお話をはじめました。
お母さんは少し離れたところで、そっと見守っています。
今まで話に聞いていた「サンタさんに緊張しちゃう彼」ではなく「落ち着いた礼儀正しい大人な彼」でした。もしかすると彼も卒業する心の準備をしていたのかもしれません。
この一年どんなことを頑張ったのか。
次の一年どんなことに挑戦したいのか。
彼の口から教えてもらいながら、
事前に聞いていたことも織り交ぜながらお話しました。
彼の受け答えがとてもしっかりしていて、こんなに大人になったのかと驚きつつ、穏やかな空気の中、最後のサンタとの会話を楽しみました。
ふと気づくと、少し離れたところでお母さんのすすり泣く音が聞こえてきて、僕も目頭が熱くなり、涙が溢れそうになりました。
そして、とうとう卒業のお話へ。
プレゼントを取り出す前に、彼にプレゼントは何を願ってくれたのか尋ねました。
すると、彼は「自分は大きくなりすぎたから、サンタさんに望むものは何もないけど、サンタさんが選んでくれるものならなんでも嬉しいと思った。」と、まっすぐな眼差しで答えてくれました。
サンタさんも君がそう話していたのを聞いていたよ。
それを聞いて、サンタさんはとても嬉しかったし、誇らしくなったよ。本当に立派なよいこになったのう。
そして、君がサンタさんのお手伝いに興味があると言っていたことも聞いたよ。
もし、本当にお手伝いをしたいと思うなら、1つ、クリスマスじゃなくても、いつでも君にできることがある。
それは、誰かを思いやる優しい気持ちを大切にすること。
そして、それを行動にすることじゃ。
サンタさんの心は、誰かの幸せを願う気持ちなんじゃ。
だから、君もその気持ちを大切にして、できれば行動してくれたらとても嬉しい。
そして、いつか君にお手伝いをお願いしたいと思ったら、わしは手紙を出そう。
その手紙を読んで、君がサンタさんのお手伝いしたいと思ってくれたら、
その時は、また君に会うことができるのう。
また君に会えるのを楽しみにしておるぞ。
彼はまっすぐな眼差しで、頷いてくれました。
その後、サンタさんへと焼いてくれたクッキーをプレゼントしてくれて、最後のサンタさんとの写真をとり、さよならの時間になりました。
最後にどうしても伝えたかった想いを伝え、家を後にしました。
「サンタさんは君のもとに来れて、とても幸せだった。本当にありがとう。また君に会えることを願っておるぞ。では、メリークリスマス。」
今日ほどボランティアをしていてよかった、と思った日はない
サンタクロースとは、大人が抱く「こどもを愛する想い」が具現化したものだと思います。
今回の訪問で、サンタさんを通して愛を受け取った少年が、少しずつ大人になり、いつかプレゼントを受け取る側から、プレゼントを贈る側へ成長していくーーー。
その中のとっても大切な瞬間の一つに立ち会わさせてもらいました。
サンタクロースとして、彼の輝かしい未来を願うものとして、これ以上ない幸せな時間でした。
今日ほどボランティアをしていてよかった、と思った日はないです。
そして、いつか彼と一緒にサンタ活動ができる日を夢見ています。
最後に、Fくんへ。
僕はキミのサンタクロースになれて幸せでした。
NPO法人チャリティーサンタ 岡山支部 ふくちゃん
追伸。
後日、お母さんからもメールが届き「息子がサンタになるのが次の夢です」と書かれていました。僕の夢が二人の夢になりました。笑
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https://activo.jp/articles/63994
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