【NPO法人ろーたす】フリースクールという新たな選択肢
文部科学省は、令和4年10月27日に公表された「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、不登校児童生徒数は9年連続で増加し、最多となった。小・中学校における長期欠席者のうち、不登校児童生徒数は244,940人(前年度196,127人)、児童生徒1,000人当たりの不登校児童生徒数は25.7人(前年度20.5人)である。
「 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」より
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm
大阪市住吉区にある、特定非営利活動法人 不登校・病児自立支援事業ろーたす(代表:松下祥貴、以下NPO法人ろーたす)は設立して4年目。フリースクールをどのような運営をしてきたのだろうか。
創業ストーリー
代表の松下は幼少期から腎疾患を患っている。入院や生活制限ばかりの子ども時代を過ごし、いつも夢見ていたことは「みんなと同じように過ごすこと」だ。また、高校の時には母親を亡くした。しかし、病気の時も母を亡くした時も、常に周りの人たちに支えられ、いつしか『沢山の人たちに支えてもらった分、社会に尽くせる人になりたい』と思うようになったのである。
その後、創価大学を卒業後に就職したのが、家族の事情で、自宅で過ごすことができない子ども達が生活を送る児童養護施設だ。そこで学校に行けない子ども達と関わり、「子供たちの居場所を創りたい」「人生を存分に楽しんでほしい」と思うようになったのである。
その想いが溢れ出し、一念発起。児童養護施設を退所後、不登校支援をしている大阪市内のNPO法人に1年間勤め、2019年4月、松下が26歳の時に自宅の駐車場を改装した教室から「ろーたす」をスタートしたのである。
フリースクールにしかできないこと
最初は「いきなり何を言い出すんだと」反対にあった。しかしながら、辛抱強く活動を続けた。そして次の3つの学校ではできないフリースクールにしかできないことを説きつづけ、利用者と支援者が徐々に増えていった。
まず「異年齢での交流」である。学校では異年齢で過ごす時間はごくわずかだが、フリースクールでは様々な年齢の子どもが一緒の時間を過ごすのが当たり前だ。社会に出れば同学年だけで、過ごす機会はほとんどない。異年齢で過ごすことは、そのまま社会性を身に着けるのに他ならないのである。
次に「多様性の担保」だ。ろーたすには多様な子どもが過ごしている。、賑やかな子どももいれば、静かな子どももいる。知的に遅れがあったり、発達障害と診断される子どももいる。学校に通ってない子どもばかりでなく、学校に通っている子どももいる。この多様性こそが、社会の縮図であり、これもまた社会性を身に着けることにほかならないのである。
最後は「1人1人に寄り添った」教育だ。ろーたすでは、学習指導要領に沿った学習を行う必要がない。学習に不安がある子供は復習をし、興味のある分野をとことん学ぶこともできる。日本の教育システムでは、なかなか実現が難しい「個別最適化教育」を行えるのも、フリースクールの特徴なのである。
これらの地道な活動を続けてきた結果、利用する子どもは法人全体で70人ほどの児童生徒が在籍する賑やかな法人になった。スタッフ数は正社員4名、非常勤2名、ボランティアスタッフは延べ60名程だ。さらに、月額980円からのマンスリーサポーターも100名を超えた。歯を食いしばって続けてきた結果、多くの方の信頼と応援を得ることができたのである。
ろーたす の課題
ろーたすが設立して4年。「人材」と「収入」という点で課題もある。ここまでろーたすが成長を続けてきたのは松下のマンパワーによるところが大きい。これから必要になってくるのは若いスタッフの成長と松下の知り合い以外からの支援者を募ることだ。
まず「人材」について、スタッフにも松下は熱い思いを持っている。松下が抱いている想いはろーたすで社会人の第一歩を歩く若い世代に一人前の社会人になってほしいということだ。「社会人のデビューがろーたす」で良かったと思ってもらいたいのである。
現状、バックオフィス業務が松下の中心になっているが組織として取り組めるようにことが急務だ。
そして「収入」にも関わってくることであるが、人件費をもっと捻出したいということがある。フリースクールに通う子どもはいわゆる「手のかかる子供」だ。時には個別指導塾のように1対1で教える必要があるのに加え、メンタルが不安な子どもにはケアをする必要がある。そのためにスタッフの数をそろえてより一層の「1人1人に寄り添った教育」を施したいのである。
さらに「収入」の面では、行事を開催する際には資金が必要ということがある。学校に通わないことにもデメリットがあり、それは体験活動や行事に参加できないことである。”体験”は、心身の発達に最も大きな影響を及ぼす。だからこそ、ろーたすでは運動会、文化祭、宿泊行事に加え、西成区の炊き出しボランティアへの参加や、フレキシブルオフィスのWeWorkでのお仕事体験、などの行事を行ってきたのだ。行事を通して子ども達に笑顔と活気が溢れ『自分にはこんなにも大きな可能性があるんだ!』と感じてもらうことが松下の想いである。
ろーたすの展望
不登校の子ども達が増えている理由は様々である。しかし、少し視点を変えると「新たな学びの場」を子ども達が求めているとも言えるのだ。フリースクールに対して社会も学校も非常に懐疑的な見方をしていると松下は感じている。
しかし、ろーたすの子ども達の中には、不登校の期間があっても努力を重ねてAO入試に合格し大学に入学した子ども、自分の夢に向かってひたすら走っている子ども、学校教育を受けなくても自己実現を果たしている子どもが何人もいるのである。
フリースクールが現在の教育機関にとって代わる”新たな選択肢”となることが必要だと松下はひしひしと感じている。しかし、フリースクールは現在、行政からの支援はなく、経済的に厳しい運営を強いられているのが現状だ。
その中でも松下は「ろーたすは、フリースクールが新たな学び場としての選択肢であると子ども達に提示し、社会にムーブメントを必ず起こす」と創業時の情熱のままに言うのである。
特定非営利活動法人不登校・病児自立支援事業ろーたすの法人活動理念
理念:1人1人の自己実現
ミッション:あ幼な価値観を認め合い、1人1人が威信を持って自己実現できる社会を目指す。
私たちの行動指針:ムーヴメント・共育・自主