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2023/04/23

なぜ今、キャリア教育なのか

こんにちは、Japan Education Lab 代表の古谷です。
Japan Education Labでは学校教育におけるキャリア教育をより良くするために、主に授業コーディネートと題して事業を行っております。

さて、表題にもある通り「なぜ今、キャリア教育なのか」ということについて。いたるところで僕がキャリア教育に携わる理由を話しているのですが、話していると内容があっちこっちに飛ぶのが僕の性分で、ストレートに伝えられていないこともあると思い、表題も含めてきちんとしたためることにしました。(文章でもとんでいくかもしれませんが)

どうしてこのタイミングでと言われれば、昨今、様々な社会現象や学習指導要領の改訂もあり、色んな意味でキャリア教育の機会が損なわれつつあるんじゃないかと危惧していること。(学校現場が忙しいのは百も承知です)

また、学校の先生になりたくない人が増えていることもあり、外からはもちろん、自分の家庭でもキャリア教育をすることはできて、たとえ先生にならなくても、楽しいからキャリア教育に参画してほしいという想いから。

これを読んで、「たしかにそうだよね」というより「それなら、〇〇してみよう」と行動に起こしてくれる人が少しでもいてくれたら幸いです。

原体験

おそらく、僕は周囲の家庭に比べるとお金のない家庭で育ってきたと思います。今日のごはんが・・・というレベルではないですが、習い事をしたいと言い出せるレベルの家庭ではありませんでした。たぶん、言えばやらせてくれたかもしれませんが、小さいながらも遠慮していた覚えがあります。
そして、高校を卒業したら働けばいいと思っていたので、勉強に対しても熱を注ぐ気にもなりませんでした。

中学校を卒業後は、筑波大学附属坂戸高校へと進学しました。

この学校は総合科学科の学校だったためか多くの取り組みをしており、たった10年前ですが、物珍しい学校だったと今では思えます。総合科学科の学校ということもあり、おそらく他の学校よりも自己のキャリアと向き合う時間は圧倒的に多く、いろんな経験・体験をしました。ですが、内容の『落とし込み』は全くできませんでした。たくさん、材料が手元に来たけど、これどう調理するの?状態です。
高校が悪いとか、先生の質が悪いとか、そういうわけではなく(むしろ、かなり良い方です)単に、その時の自分の状態と渡された材料がミスマッチな感じ。とかく違和感しかありませんでした。
この違和感が厄介なもので、一度感じてしまうと全てのコンテンツに不信感が湧いてきました。

「結局、これをやっても意味がないんじゃないか」

僕がキャリア教育をやっていきたいと思った源泉はここにあります。
こういうバイアスがある限り、おそらくコンテンツの効果はほとんど生まれないし、何よりコミュニティが狭いほどに伝播しやすいんですよね。発信も受信も。

高校で受けたキャリア教育は、僕からしてみれば受けられてよかったという想いと、もっと良いものができるんじゃないかという想いの2つがありました。そして大学時代での学生団体や教育ボランティアの経験を経て、自ら実践したいと思いました『本当に必要なキャリア教育』を。

先生ではなく、外側からやる意義

僕が現在のように外側からキャリア教育を推していこうと思った理由は2つあります。

  1. 質と量の両方を追い求めることが出来る
  2. 条件を並列で捉えることが出来る

僕の中でキャリア教育をデザインするうえでの大前提が、『学校(個)に合わせた内容を創れる』こと。
学力差だけでなく、地域差や進路の多様性、男女の比によっても必要な内容は変わると思っていて、生徒の状況に対応した、ある種のフルオーダーメイドで授業構想をできる形を目指しています。
そして、キャリア教育を拡げようと思ったら、1つの学校に執着するよりもいくつもの学校で活動する必要があり、今の立場を選びました。

また、Japan Education Labのミッションは『リアルなキャリア教育を”そうぞう”する』というものになっています。生徒に合わせたキャリア教育を想像し創造という想いが込められています。そのためには実践だけでなく、構築と研究の側面も必要だと思っています。

僕は2年間だけ沖縄県の久米島にて中学校の先生をしていました。キャリア教育は、学校現場で常に生徒たちと交流を図ることで、適切な道筋が見えてくるものかと思い、一度どっぷり浸かってみようと学校の先生になりました。しかし、実践だけでないものも追い求めようとしたとき、現場では全てを賄いきれるリソースがありませんでした。(現場は現場ですごい楽しかったです)

なので、この立場を選んだことは、自分たちでキャリア教育を研究・構築することはもちろんのこと、他団体との協働や様々なICTとキャリア教育の相性を検証したりと、先生方がやりたくともできないことを追求していくことができ、多くの現場へと還元できると考えての結論です。

なぜ今、キャリア教育なのか

ここまで、僕のバックボーンのうえでのキャリア教育についてお話してきました。次にお話したいのは、社会課題の側面でのキャリア教育です。
よく学校からのオーダーで社会・職業への価値意識の醸成に関する授業デザインについて求められることがあるのですが、授業中にしっくりこなくないときが多々ありました。それを紐解いて、認知した感覚がこちらです。

キャリア教育において、どれだけ生徒が職業やキャリアについてを私生活圏内で知覚できているのか、ここが最初の壁になっているのではないかと推測しました。例えば、お金は普段から使っていて、必要なものであると認識しているので、お金の価値観に関する授業(金融リテラシー、投資、ファイナンス)はうまく落とし込めると思います。しかし、職業に関してはどうでしょう。生徒が普段から知覚していなければ、価値化するというのが半強制的なジャンプアップなのかもしれません。『知る』『理解する』『価値化する』にも順序があり、同時にはとてもじゃないですが、無理があるように感じるときもあります。何をもって知覚していると判断するのかの観点も必要です。

この課題は学校教育だけでなく家庭教育も重要です。家庭で保護者が自身の仕事について子に話す量は大きな財産になります。しかしながら、僕が生徒数人に直接質問しただけになりますが、「よく話してくれる」と回答してくれた子はほとんどいませんでした。(ここまで考えるとSESも課題をつくっている要因にもなりえるかもしれません)

進学についても同様です。身の上話ですが、僕は親が大学に行っていなかったので、僕にとって大学という存在は身近ではありませんでした。そのためか、どれだけ学校で進学の話があろうともピンとこなかった記憶があります。大きく変わったのは高校外での活動で多くの大学生に出会えたときでした。(進路を就職から進学に変えたのもそのときでした)

最近は大学生と高校生が触れ合える機会がかなり増えています。しかし、それをどれだけの学校・先生が把握しているのでしょうか。地域格差も含め、生徒がとる情報には大きな格差があります。

なので僕らは学校といい関係性をもち、他団体・企業が実施しているこのような機会を学校を通じて生徒に届けるのも大きな役目であると考えています。私生活の壁を僕らだけで崩すには限界があり、そこを学校と協働して切り崩すことで、学校で行われるキャリア教育も効果性がさらに高まると考えられます。

今でもキャリア教育=進路指導と捉える人もいます。僕らからすれば教科学習をはじめ、学校行事、部活動、そして言わずもがなですが探究学習も立派なキャリア教育です。さらには、友達同士で将来やりたいことを恥ずかしげもなく話せる、そんな環境・風土をつくるのもキャリア教育だと思います。

自分と本気で向き合う時間をきちんと設計することで、社会の中での自己確立を通して、貧困の連鎖を解決できる糸口になると考えています。AI・ロボットの台頭によって職業が失われるとか、予測不可能な社会だからとかではなく、多くのシステムがあり、学校に関われる人が増え、たくさんの知見で学校・先生・生徒・家庭をサポートできる状態が整いつつある今だからこそ、キャリア教育をします。

創りたいキャリア教育の設計

とある勉強会で『organization theory & Design』についてレクチャーをしてもらったときに、組織の成長理論をキャリア教育に投影出来る気がして、下記のような図を考えました。

  • 価値化:キャリアについて考えることを自分事にできている
  • 抽象化:自分の描きたいキャリアを抽象的に見据えられている
  • 公式化:具体的なキャリアに対して、何が必要か考えがつく
  • 最適化:現状の自分が進んでいく次の道を根拠をもって選択できる

成長していくにはステージがあって、一つ上にいくためには『ひずみ』が存在するため、中々うまくあがることができません。それを解決するためにキャリア教育が特効薬になると考えました。

これを基にすると、本来であればキャリア教育というのは生徒がどの状態にいるのかを見定めたうえで計画・実施をしていくのがベストであると考えてられます。しかし、状態把握のための設計がまだまだできていないので、そこを充実させるのが、目下やるべきことだと今は捉えています。そのうえで、ステージが上がったときに生徒の学力やグループ単位での様子、意識や精神状態に合わせて適切なコンテンツを開発するのが目標です。

また、キャリア教育は授業の完成度が測りづらいものとなっています。なので、今回設定した生徒のペルソナに対して、本当にこの授業の設計でよかったのか、ファシリの仕方は適切だったのかなどの授業への評価の部分を完成させる必要があります。単純に生徒から『理解できた』『楽しかった』だけではなく、授業での経験を科学的に測定し、次の授業へと橋渡しできる設計を考えなければなりません。(SCATでの質的データの測定を検討しているので、詳しい人教えてください)

現在は授業アンケートをとって、生徒の自己肯定感などの側面から学校でのキャリア教育について言及しています。とはいえ、これでもいわゆる『やりっぱなしのキャリア教育』と同じなので、どんな経験をして、どの数値が向上して、現在のステージから上に行くために、どの数値を向上させたいから、こんな授業をデザインしましょうのレベルになる必要があります。
そして、ICTを利用してのポートフォリオ化も必要です。ポートフォリオで最も重要視したいのは『解像度』です。ただやったワークシートを溜めるのでも、簡易なうえ、連動しているワークシートであればポートフォリオの役割を十分に果たすでしょう。

僕はその1つ1つの解像度をさらに高めたいと思っています。ここでいう解像度とは『自身のアウトプットまでの過程』です。自分がどういう論理をたどって、どういう意識・精神のもとでアウトプットをしたのかを残すことで、個別振り返りの必要性も高まるし、他者からのフィードバックも明瞭になって今の自分との比較もしやすくなると思います。

どこを目指しているのか

僕は生徒が学校に対して最も価値を感じる瞬間は卒業して幾年か経った後だと思っています。そこで、『この学校を卒業したから今の自分がある』と感じてほしいんですよね。
そのためには色んな要素が必要になると思いますが、キャリア教育の充実度も大きな要素だと思います。しかし、ニュースやメディアでも取り上げられているように先生方の多忙さは明白です。だからこそ、キャリア教育に注力できる僕らが、学校の『キャリア教育』という資本を底上げする役目を担っていくべきだと考えています。まずは確実にキャリア教育を支える縁の下の力持ちを目指していきます。

最後に

ここまで長きにわたりお読みいただきありがとうございました。
今の社会では、どんな人でも学校教育に関わることが出来ると思います。僕らを通してでもいいし、他団体・企業、それこそ直接でも。色んな人たちが関わることで学校教育は絶対に良くなると思うので、是非とも機会があれば関わってほしいです。よろしくお願いいたします。

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一般社団法人Japan Education Lab

一般社団法人Japan Education Labの法人活動理念

OUR MISSIN

『リアルなキャリア教育を"そうぞう"する』
今を生きる子どもたちにとって、本当に必要なキャリア教育とはどんなものでしょうか。
弊社におけるキャリア教育とは『自分と対話を通じて、自分の本心・本音と向きあい、自分について考えることを習慣化させる』そのための一つの手段だと捉えています。そして、そこから生き抜く力、意志決定力を磨かれ、自分の将来に対する選択を受動的、惰性的でなくなっていく、そのように想い描いています。
そのために私たちは、より社会に自分に未来に対して、"リアル"なキャリア教育を"創造"・"想像"していきます。

OUR VISION

『キャリア教育が学校だけでなく、家庭や社会に浸透し、みんなが自分の意志で人生を歩む幸せを掴める』
すべての学校・先生・生徒が真摯に向き合うことで、学校だけでなく個人間や学校外の環境で循環されゆくキャリア教育というのが形成できると考えています。授業という枠ではなく、普段の他愛もない会話の中で、声を大にして自分の未来について語り合う。そのような光景がもっと多くの場所で生まれてほしいと願っています。
そして私たちは、一歩先を見据え、子どもたちが成長できる機会をそうぞうし続けることで、個の可能性を引き出せる環境を生み出し、キャリア教育が循環される社会のために貢献し続けます。