持続可能な社会の実現のために避けて通れない環境問題。
私たちが生活する上で何ができるか考える上、まずはどのようなことが起きているか知ることが大切です。
この記事ではどのような環境問題があるか、その原因や例をもとにご紹介します。
目次
地球温暖化とは、人間の活動が活発になるにつれて、二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)などの「温室効果ガス」が大気中に大量に放出されることで、地球全体の平均気温が急激に上がり始めている現象のことをいいます。
世界各国が最新の科学的知見として参考にしている、国連気候変動の関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、
人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い(可能性95%以上)
とされています。
地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスは二酸化炭素で、化石燃料の消費などにより大量に放出されています。(温室効果ガス排出量の65.2%)
また、大気中の二酸化炭素を吸収する森林の減少も二酸化炭素量の増加に影響しています。(温室効果ガス排出量の10.8%)
世界の平均気温は上昇傾向にあり、1880~2012年で、気温は0.85℃上昇しています。
また、地球温暖化(気候変動)は長期的な影響を考える必要のある問題です。
現在すでに起こっている問題やこれから起こると予測される問題をご紹介します。
温暖化の影響が関与していると考えられている、海洋の熱膨張や、氷河、南極氷床の減少などにより、1901~2010年で世界平均海面水位は約19cm上昇しています。
今後の予測として、現在のように温暖化ガスを排出しつづけた場合、2100年には海面水位が45~82cm上昇する可能性が高いと予測されています。
出典:環境省「STOP THE 温暖化 2017」(PDF)
また、海面水位が上昇することで、下記のような問題が起こると予想されています。
海岸侵食、高潮・高波・異常潮位などの沿岸災害の激化、沿岸湿地喪失などによる沿岸生態系・淡水生態系への影響などが予想される。海面水位上昇は、特に、海抜の低い珊瑚礁の島々からなる国などにとっては深刻な脅威となる。
国連気候変動の関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、
1979-2012の期間中、北極圏の年平均海氷面積の減少は10年あたり3.5-4.1%の割合であった可能性が非常に高い(90%)。
と言われています。
海氷の減少により海水面の上昇がおこったり、海氷で生活をする生き物の生態系への影響が予測されています。
WWF JAPANによると、北極の海氷の減少により、ホッキョクグマの個体数が2/3まで減少するおそれもあるようです。
気候変動に伴う自然生態系の変化は世界の各地で現れており、国内でも既に、植生の変化、一部の野生動物の分布拡大、サンゴの白化現象などが確認されています。
出典:環境省「生物多様性分野における気候変動への適応」(PDF)
温暖化、気候変動により食料の生産量にも影響がでていると考えられています。
小麦や米、トウモロコシなどの主要穀物の収量の低下や、家畜の繁殖成績の低下や死亡、水稲や果樹の品質低下などが温暖化による影響を受けていると考えられています。
出典:環境省「STOP THE 温暖化 2017」(PDF)
ここではいくつか温暖化による問題を紹介しましたが、その他にも自然災害の頻発化や、感染症の拡大などの様々な問題が引き起こされると予測されています。
大気汚染とは、
大気中に排出された物質が自然の物理的な拡散・沈着機能や化学的な除去機能、及び生物的な浄化機能を上回って大気中に存在し、その量が自然の状態より増加し、これらが人を含む生態系や物などに直接的、間接的に及ぼす事
とされています。
大気汚染物質にはガス、粒子状物質があり、工場や火力発電所、自動車など主に私たちの社会活動によって引き起こされます。
人為的な要因以外にも、火山の噴火や森林火災などの自然現象によっても大気汚染物質は発生しています。
光化学オキシダントによる光化学スモッグは、目の痛みや吐き気、頭痛など人体への影響や、植物にも害を与えるといわれています。
PM2.5(微小粒子状物質)は、呼吸器疾患だけでなく、肺ガンなどを引き起こすとされています。
大気汚染物質が空気中で硫酸や硝酸などの強い酸性の物質に変化し、雨に溶け込むことで起こる酸性雨は、森林や農作物、生態系への悪影響が引き起こします。
出典:環境再生保全機構「主な大気汚染物質と人体への影響」
出典:環境省「こども環境白書 大気汚染が引き起こす問題」(PDF)
空気中に排出されたフロンが成層圏に達して分解されオゾン層が破壊されることで、紫外線を吸収するオゾンが減少し、地表に達する紫外線が増加します。
これにより、皮膚ガンなどの人体への悪影響や、生態系への悪影響を及ぼすおそれがあります。
出典:環境再生保全機構「排出物質:フロン」
出典:経済産業省:「 フロン排出抑制法の解説」
国際海洋条約では、海洋汚染は下記のように定義されています。
生物資源及び海洋生物に対する害、人の健康に対する危惧、海洋活動(漁業その他の適法な海洋の利用を含む)に対する障害、海水の利用による水質の悪化及び快適性の減少というような有害な結果をもたらし又はもたらすおそれのある物質又はエネルギーを、人間が直接又は間接に海洋環境(河口を含む)に持ち込むこと
参考:一般財団法人環境イノベーション情報機構 「環境用語集:海洋汚染」
同条約では海洋汚染の原因を下記のように分類しています。
参考:一般財団法人環境イノベーション情報機構 「海洋汚染のメカニズム」
海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)は、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響等、様々な問題を引き起こしています。また、近年、マイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチックごみ)による海洋生態系への影響が懸念されており、世界的な課題となっています。
出典:環境省 「令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」
有害化学物質による海洋汚染は人体や生態系へ影響を与えています。
水俣病に代表される水銀などの重金属による魚介類の汚染や、いわゆる環境ホルモンによる生態系への影響などが問題として挙げられます。
出典:国立環境研究所化学環境研究領域「有害化学物質による地球規模での海洋汚染の現状と課題」二刀 正行
水質汚濁とは、人間活動がもたらす水質の悪化のことをいいます。
茨城県霞ヶ関環境科学センターの資料(PDF)で紹介させている、ボルドゲイト(1979)によると、
「①人の健康 ②生物資源 ③生態系 ④環境の快適性を損なうような、または、 ⑤ルールに則した環境利用を妨げるような物質もしくはエネルギーを人が水域に投入すること」
と水質汚濁を定義しています。
また同資料によると、下記のように水質汚濁と海洋汚染を呼びわけているようです。
「水質汚濁防止法」の対象となる河川・湖沼・沿岸海域などについては水質汚濁、
「海洋汚染防止法」の対象となる外洋については海洋汚染と呼ぶのが一般です。
また、水質汚濁や海洋汚染をまとめ「水質汚染」と呼ぶこともあるようです。
全国浄化槽推進市町村協議会によると、
水質汚濁の原因の5~7割が、家庭からの生活排水によるものであると言われています。
汚濁した河川、湖沼の水質問題は、悪臭の発生、水生生物の生育環境の悪化、さらに無生物化等生態系への悪影響、工業、農業、生活水利用も不適合となるなど、生活や産業経済活動への支障と環境破壊などをもたらします。
といわれています。
また、生活排水や工業は排水によって水中の窒素・リンが増えると、それを栄養とする植物プランクトンが急速に増える「富栄養化」が発生することがあります。富栄養化が起きると、水中の酸素が不足し魚類や藻類が死滅してしまうことがあります。
海洋で起こる赤潮とよばれる赤褐色、茶褐色の植物プランクトンが発生する現象も富栄養化によるものであるという説があります。
公益財団法人日本環境協会によると、
土壌汚染とは、人の活動にともなって排出された有害な物質が土に蓄積されている状態
とされています。
出典:公益財団法人日本環境協会「土壌汚染による環境リスクを理解するために」(PDF)
また、土壌に吸着されにくい汚染物質が地下水に移行することで、地下水汚染の原因となる場合があります。
出典:公益財団法人日本環境協会「土壌汚染による環境リスクを理解するために」(PDF)
出典:環境省「地下水をきれいにするために」(PDF)
土壌汚染された物質が大気に揮散したものを吸い込んだり、農作物や魚介類を食べることで蓄積された汚染物質を摂取してしまったり、直接皮膚に触れるなどすることで健康被害がでることがあります。
農作物や飼料用の植物の生育阻害などの悪影響が発生するおそれがあります。
また、ミミズのような土壌生物が、汚染物質を分解した微生物を食べたり体に汚染物質が浸透することで食物連鎖にとりこまれ、生態系への影響などが発生するおそれがあります。
出典:公益財団法人日本環境協会「土壌汚染による環境リスクを理解するために」(PDF)
出典:農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター「土壌汚染による土壌生物に関する生態リスクの解析」金子信博(PDF)
森林破壊とは、
人間の手によって森林の皆伐または間伐が行なわれた結果,森林が減少・劣化すること。
です。
引用:コトバンク「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「森林破壊」の解説」
また、世界の森林面積は約40億ヘクタールで全陸地面積の約31%を占めていますが、2000年から2010 年までの10年間に年間1,300万ヘクタールもの森林が失われてしまっています。
出典:環境省 Forest Partnership Platform「世界の森林はいま」
年間1300万ヘクタールというとイメージがわきづらいですが、日本の面積の約3分の1程度の広さにあたります。
「国連森林戦略計画 2017-2030」によると、森林は人々や生き物にとって非常に重要な役割を担っています。
森林破壊が進むと、下記のような点に悪影響がでるおそれがあります。
森林は地球の陸地面積の30%を占めており、世界人口の約25%の人々が基礎食料、生計、雇用及び収入を森林に依存しています。
また、森林は土地の劣化を防いだり、洪水や地すべり、干ばつなどの自然災害のリスクを減少させる役割も担っています。
森林は陸域の生物種の約8割に生息・生育の場所を提供しており、また気象変動の緩和の役割も担っています。
出典:林野庁「国連森林戦略計画 2017-2030」(PDF)
砂漠化対処条約のよると、砂漠化は、
乾燥地域、半乾燥地域、及び乾燥半湿潤地域に おける種々の要因(気候の変動及び人間活動を含む。)による土地の劣化
とされています。
出典:環境省「砂漠化する地球 -その現状と日本の役割- 1.砂漠化とは?」
砂漠化の原因として、『気候的要因』と『人為的要因』の二つが挙げられます。
出典:環境省「砂漠化する地球 -その現状と日本の役割- 2.砂漠化の原因」
砂漠化の問題として、乾燥地域に住む人々の生活基盤の悪化や、生物多様性への悪影響などがあります。
生活基盤が悪化することで、行き過ぎた耕作や森林伐採などが行われると、より砂漠化が進んでしまうこともあります。
また、気候変動は砂漠化の要因の一つですが、砂漠化が進むことで気候変動への影響もあり、相互作用的に問題が深刻化すると考えられています。
出典:認定NPO法人FoE Japan「砂漠化の基礎知識」
出典:環境省「砂漠化する地球 -その現状と日本の役割- 3.砂漠化の影響」
ごみ問題とは、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会により、不法廃棄や処分場の処理能力、焼却による二酸化炭素の発生など、ごみ・廃棄に関する諸問題のことをいいます。
参考:彦根市「地域行動計画編 第1章 ごみ問題について」(PDF)
ごみ問題は多岐にわたるため、一概にはいえませんが、下記のような点に原因があると考えられています。
ごみの焼却時に発生する二酸化炭素による温暖化への影響や、不法投棄、街で捨てられたごみが海に流れ着いた海洋ごみなど、様々な点で環境問題へと繋がっています。
ごみの処分場の数は国土の狭い日本では増やしづらい一方、ごみの排出は日々行われています。
2019年度における一般廃棄物の最終処分場の残余年数は21.4年とされており、このままだと埋め立てるスペースがなくなってしまうおそれがあります。
出典:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について」
廃棄物の発生量は年々増大し、その内容も複雑化しつつあるという状況の中で、有害な廃棄物が国境を越えて移動し、発生国以外の国において処分される事例が増えてきています。
しかし、このような有害廃棄物の越境移動は、廃棄物の有害性が極めて高かったり、受入れ先国において適正な処分がなされなかったりしたために環境汚染につながる事例が多く、地球的規模の環境問題となっています。
出典:一般財団法人 環境イノベーション情報機構「有害廃棄物の越境移動とは?」
まず、生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのことです。
生物多様性条約では、次の3つのレベルの多様性があるとしています。
生物多様性の損失の要因として、下記のような点が考えられています。
また、人間のよるものだけでなく、気候変動などの自然的な要因も挙げられます。
出典:環境省「生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021 」(PDF)
また、人間活動による影響を考えるとき、開発による悪影響などを想像しがちですが、
人間活動を通じて作られた環境である里山などは、人口減少などによる活動の縮小によって生態系が変化し、生き物が絶滅の危機に瀕する場合もあります。
まず生物多様性は、多様性なそれぞれの生物が存続すること自体が、人間の利益に関わらず価値のあるものです。
その上で生物多様性の危機による問題をご紹介します。
食料や木材等の供給サービス、大気や水の浄化サービスなどの生態系サービスにより私たちに様々な恩恵を受けています。
この生態系サービスが過去50年間で劣化傾向にあるとされています。
出典:環境省「生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021 」(PDF)
ここまで、様々な種類の環境問題をご紹介してきました。
2016年度の環境省「環境にやさしいライフスタイル実態調査の国民調査」によると、
環境を守る上で最も重要な役割を担っているのは「国民」だとする回答が41.9%と最も多くなっており、次いで「国」が23.8%、「事業者」が16.0%の回答になっています。
私たちが生活をする上で、常に環境のことを考えて行動することは難しいかと思います。
ですが、余裕があるときや思い出したときは、環境に優しい選択ができないかぜひ考えてみてください。
また、環境問題に取り組むNPOへの寄附や、ボランティアに参加してみることも私たちが環境問題に対してできるアクションのひとつです。
activoでは環境問題に関するNPOのボランティア募集を掲載しているので、興味を持っていただけた方はどのようなボランティアがあるか探してみてください。
国内最大級のNPO・社会的企業のボランティア・職員/バイトの情報サイト「activo」編集部です。はじめてボランティアや社会問題に関心を持った人でもわかりやすい情報を発信します。